韓国特許法の改正内容及び出願実務
目次
T.特許法の主要改正内容
1.2006年3月3日(公布日)から効力が発生する規定
2.2006年10月1日から効力が発生する規定
3.2007年7月1日から効力が発生する規定
U.韓国における特許出願実務
1.最後拒絶理由通知後または拒絶決定後の補正実務
2.分割出願実務
3.その他の出願実務
T.特許法の主要改正内容
韓国特許法と実用新案法改正案が2006年2月9日付で国会を通過し、2006年3月3日付で公布されており、その主要な改正事項は次の通りである。
1.2006年3月3日(公布日)から効力が発生する規定
(1) 提出期限が土曜日である場合、期限日延長(第14条第4号)
特許庁書類の提出期限が土曜日である場合、次の勤務日(例えば、月曜日)までに特許庁書類を提出すればよい。
(2) 公知例外規定(新規性擬制の対象)拡大(第30条第1項)
特定公開形態に制限した新規性擬制の対象要件を、出願人が行った全ての形態の公開行為に拡大した。
(3) PCT出願の韓国国内段階移行期限の延長(第201条第1項)
PCT出願の国内段階移行のための翻訳文提出期限が優先日から30ヶ月から31ヶ月に延長された。
(4) 拒絶決定が確定された出願における先願の地位不認定(第36条第4項)
従来、拒絶決定確定された出願の場合は先願の地位が認められたが、今回の改正法によれば、拒絶確定された出願の場合には先願の地位が認められない。
2.2006年10月1日から効力が発生する規定
(1) 公知公用の国際主義(第29条第1項第1号)
外国で刊行物以外の方法で知られた技術、即ち発明の内容が国外で公知されたり公然に実施(公用)された場合にも、その発明は新規性がないものとみなされる。
(2) 植物特許の‘無性生殖’要件の削除(第31条削除)
韓国で植物特許を受けることができる対象は、これまで無性生殖する変種植物だけであったが、今回の法改正を通じて該規定を削除することによって、植物特許も他の特許と同一な要件さえ充たせば特許を受けられるようになった。
(3) 異議申立制度の無効審判制度への統合(第133条第1項)
特許異議申立手続を特許無効審判手続に一元化し、登録公告後3ヶ月までは利害関係人だけでなく誰でも特許無効審判を請求することができるようになった。ただし、登録公告日から3ヶ月経過した後は、従来と同様に利害関係人だけが特許無効審判を請求することができる。
(4) 実用新案先登録制度の廃止
これまで実用新案登録出願の場合には、基礎的要件のみを審査して先登録した後、技術評価申請がある場合に限り実体審査を行い、実用新案登録を維持するか否かを決定したが、今回の法改正を通じて特許と同様に実体審査後に実用新案登録を許諾する制度に転換された。
3.2007年7月1日から効力が発生する規定
(1) 特許異議申立制度の廃止
特許登録公告後、異議申立を提起することができるようにした制度が廃止され、特許無効審判制度に統合される。したがって、2006年10月1日から2007年6月30日までは改正された無効審判や異議申立を選択することができるが、2007年7月1日以降に登録公告される特許については、無効審判のみを請求しなければならず、異議申立は認められないようになる。
U.韓国における特許出願実務
1.最後拒絶理由通知後または拒絶決定後の補正実務
(1) 序文
1)
韓国特許法下での明細書と図面の補正可能時期と範囲、及び違反した補正の取扱
−日本特許法とほぼ同一
2)
最後の拒絶理由の通知を受けた後に、または拒絶決定を不服として請求の範囲を補正(特許登録後の特許請求の範囲の訂正も同様である)する時には、新規事項の追加に相当してはならないという要件のほか、
@ a) 請求の範囲を縮小する場合、
b) 明白な誤記を訂正する場合、または
c) 不明確な記載を明確にする場合のうちいずれか1つに属さなければならず、
A
このような補正が特許請求の範囲を実質的に拡張・変更しないことと、出願当時に特許を受けることができるものでなければならないという要件が追加される。
3) 実務上で特に問題となるのは、特許請求の範囲を縮小(いわゆる“クレームの限定的縮小”)する場合、このような縮小が実質的に特許請求の範囲を変更することに該当するか否かに対する判断である。
(2) 審査実務(審査指針書)
1) 上位概念から下位概念に補正して請求の範囲を縮少した場合(いわゆる、“内的付加”)、一般的に変更に相当しないものと認める。
2) 構成要素を直列的に付加して請求の範囲を縮小する補正(いわゆる、“外的付加”)は、たとえ構成要素が直列的に付加された発明が当初明細書の詳細な説明に記載されていたとしても、補正前の請求の範囲に記載された発明の具体的な目的範囲を逸脱した補正に該当し、実質的に変更されたものとみなされる。
3)
発明の詳細な説明には記載されていたが、最後の拒絶理由の対象となった請求の範囲には記載されていない数値限定を追加しようとする時、これを新たな構成要素の直列的付加として補正却下決定する場合もある。
4) 引用項に関する問題
例えば、
「1.A+Bを含む装置
2.AはA’であることを特徴とする請求項1に記載の装置
3.Cを追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置」のような請求の範囲において、
第3項の構成要素を第1項に含ませる補正をする場合、第2項の発明に対して実質的に変更されたものと判断し、審査段階で補正却下決定する場合が多い。
(3) 審判院における実務
@内的付加は許容される。
A構成要素を追加する外的付加の場合、一般的に請求の範囲の変更と判断される。
(4) 法院における実務
@内的付加の場合:原則的に請求の範囲の変更と認めない。
A構成要素の直列的付加(外的付加)の場合に対しては、判例に一貫性がない。
1) 関連判例1−特許法院
1999.7.1
宣告、98ホ9840判決
“特許請求の範囲に記載された上位概念の発明を明細書に記載された下位概念の発明に縮小訂正することは、特許請求の範囲を実質的に拡張したり変更するケースに該当しない”
2) 関連判例2−特許法院1999.4.23宣告、98ホ4920判決
特許請求の範囲のうち、‘合成パイプ’を‘金属管が芯体として埋立された合成パイプ’に限定する訂正の要旨は、いわゆる構成要素の直列的付加であって請求の範囲の縮小に該当するものであり、訂正前の明細書の詳細な説明において、“・・・以上のように構成された考案は金属管(8’)が芯体として埋立された合成パイプ(8)を繋ぐ”という記載事項を参照すれば、訂正前の請求の範囲の合成パイプ(8)を解釈しても、請求の範囲を実質的に拡張したり変更するケースに該当すると言えないものである。
3) 関連判例3−特許法院
2001.1.31宣告2001ホ4173判決及び大法院2004.12.24宣告2002フ413判決
@訂正前の請求の範囲第1項
ガラス材質の画像ウィンドウを備えた陰極線管において、前記ウィンドウがその画像面に静電防止性閃光減少映像伝送コーティングを有し、前記コーティングは閃光減少特性を付与し、前記静電防止特性を前記コーティングに付与する珪酸塩物質及び無機金属性化合物で構成される粗い表面を有することを特徴とする閃光減少及び静電防止性の珪酸塩コーティングを有する陰極線管。
A訂正によって、第1項に次のような構成が追加される:
ⓐ前記無機金属性化合物は白金、パラジウム、錫及び金で構成される群から選択され、少なくとも1つの金属元素からなり、
ⓑ前記金属元素は0.005質量%乃至0.020質量%の範囲で前記コーティングに存在し、
ⓒ前記陰極線管は電気的導電通路を通じ、前記コーティングを接地電位に連結する接触手段を備えること。
一方、発明の詳細な説明及び補正前の請求の範囲第8項に接触手段に対する構成を含む発明が記載されている。
B特許法院の判断
ⓐの訂正は、上位概念から下位概念への訂正であり、ⓑの訂正は単なる数値限定の訂正であり、内的付加による訂正であるため請求の範囲の変更に相当しない。
ⓒの訂正は、訂正前の第1項に含まなかった構成要素であるコーティングを接地電位に連結する接触手段を外的に付加して限定したものであって、・・・訂正後には・・・目的が追加され、・・・目的達成のための技術内容では質的な差があるだけでなく、静電防止の効果でも顕著な差があるので・・・上記のような付加によって特許請求の範囲が実質的に変更されたものであるとみなすのが正しい。
C大法院の判断
訂正ⓒは、訂正前の本事件の特許発明の詳細な説明部分にその技術構成が詳細に記載されていたもので、…訂正前の請求の範囲第8項に存在していた技術構成を請求項だけを変えて訂正後に第1項に付加縮小したものに過ぎないので、たとえ形式的にはその縮小される対象である特許請求の範囲が訂正前後で変わったとしても、請求の範囲の実質的な内容は同一であると言えるので、訂正ⓒによって訂正前後の請求の範囲の効力の範囲が変更されたものではない。
(5) 結び
1)
内的付加は審査段階で許容されない場合もあるが、審判院及び法院ではこれを認めている。外的付加の場合、事案によって異なる(許容されない場合と許容される場合が混在する)。
2)
最初出願時または請求項補正時にそれぞれの発明の特徴に対して別途の請求項を作成し、全ての特徴をカバーすることができるように複数の請求項で作成し、この際韓国では日本とは違って多重従属項が認められないので、請求項作成時に留意しなければならない。
3)
最後の拒絶理由が通知された後、または拒絶決定に対応する場合、分割出願を積極的に活用することも好ましい。
2.分割出願実務
(1) 概要
拒絶決定後に請求の範囲の補正が厳格に制限されることによって、分割出願の活用度が高くなった。以下、分割出願の目的による好ましい処理要領について考察する。
(2) 関連法規定
1) 特許法第52条第1項
特許出願人は2以上の発明を1つの特許出願にした場合には、第47条第1項の規定によって補正が可能な期間内にその一部を1以上の特許出願に分割することができる。
2) 特許法第47条第1項3号
特許拒絶決定に対する審判を請求する場合には、その審判の請求日から30日以内に分割出願しなければならない。
(3) 分割出願の目的の類型
1) 上位概念及び下位概念の発明を各々別個の出願で行う場合
−迅速な権利化を図るために登録可能性の高い請求項を親出願とし、残りの請求項を分割出願で行う場合など
2) 親出願を諦めて分割出願で権利化を図る場合
−補正制限により親出願の権利化が困難であると判断し、親出願を諦めて分割出願で権利化を図る場合など
3) 権利の流動性を確保するために分割出願する場合
−親出願に対する権利化失敗に備えて保障策として分割出願する場合、または今後市場の変化によって権利範囲を決定するために分割出願する場合など
(4) 類型別の問題点及び処理要領
1) 上位概念及び下位概念の発明を各々別個の出願で行う場合
@ 先願主義との関係
通常、親出願と分割出願はその対象発明の要旨が類似しているので、特許法第36条の先願主義による拒絶理由が適用される場合が多い。この場合、出願人は請求の範囲を差別化して補正したり、親出願と分割出願のうちいずれか1つの出願を選択して取下げることによって拒絶理由を克服することができる。
しかし、一方の出願が拒絶確定されたり登録された場合には、協議が成立しない場合とみなされるので、分割出願時に注意が必要である。
A 問題提起
例えば、親出願で一部の請求項だけが拒絶され、拒絶された請求項を削除して分割出願をし、残りの請求項に対して迅速な権利化を図る場合、通常分割出願の発明は親出願の発明より上位概念になる。
しかし、親出願が登録された後、分割出願に対して先願主義の違背による拒絶理由が適用される場合、登録された親出願を取下げることができないので、上位概念の分割出願を取下げなければならない状況が発生する。
B 対処要領
上位概念の発明と下位概念の発明を各々別個の出願で行う場合には、上位概念の発明を親出願とし、下位概念の発明を分割出願とすることが好ましい。
例えば、独立項だけが拒絶された場合、親出願に独立項を残し、残りの従属項は分割出願とすることが好ましい。
分割出願は親出願の審査請求順に審査を行うので、実質的に権利化にかかる時間が親出願に比べて顕著に遅延することもない。
2) 親出願を諦めて分割出願で権利化を図る場合
@ 問題提起
親出願に対して審判請求書を提出し、その請求日から30日内に分割出願書を提出した場合、その後親出願に対する審判が取下げ・却下されれば、その審判請求は最初からなかったものとみなされるが、この場合にその請求日から30日の補正期間は適法に維持されるか。
A 親出願の審判を取下げた場合
特許法第161条第3項によって審判請求が最初からなかったものとみなされるので、これに伴う分割出願は期間的要件を充たさないものとなる。
B 親出願の審判が却下された場合
a.特許法第141条によって決定却下された場合
手数料未納、請求の理由未提出などの場合に、当該審判請求書は決定却下され、決定却下された審判請求は、その請求手続自体が不適法なものであるため、これに伴う補正期間も不適法なものとみなされるので、その期間内に提出された分割出願も不適法なものとみなされる。
b.特許法第142条によって審決却下された場合
審決却下の場合、審判請求書は適法に提出されたものであるため、これに伴う補正期間も適法なものとみなされるので、その期間内に提出された分割出願も適法なものとなる。
C 対処要領
親出願に対して請求の理由を含む審判請求書を提出して請求手続を適法に行った後、親出願の出願を取下げることで特許法第142条による審決却下を誘導することが好ましい。請求の理由はその内容の量や質に関係なく、記載されているだけで決定却下の対象から除外されるので、形式的な内容(意見書提出時の内容をそのままコピーして記載しても構わない)を記載して提出した後、親出願に対する出願取下書を提出する(親出願の出願取下げは審決却下事項である)。
3) 権利の流動性を確保するために分割出願する場合
@ 問題提起
親出願の独立項に対して審判を行い、審判で拒絶された場合、その従属項に対して分割出願を通じて権利化を図ろうとする場合などにおいて、親出願と分割出願の請求の範囲が重複すれば特許法第36条第2項によって協議命令を受けるようになり、協議が成立しない場合(つまり、いずれか一方を取下げない場合)、両出願とも特許を受けることができない。
A 分割出願に対する審査請求期間が1年以上残っている場合
分割出願に対して審査請求を行わず、親出願に対する審判の結果が出た後、請求の範囲の補正書と共に審査請求を行う。
B 分割出願に対する審査請求期間が1年以下の場合
親出願の請求の範囲に記載された発明を全て分割出願の詳細な説明に追加し、分割出願の請求の範囲にはダミーの第1項を作成して記載する。このダミーの第1項は拒絶事由が明確に現れるように故意に作成しなければならない。その後、意見提出通知書の通知を受け、親出願に対する審判の結果が出るまで期間を延長し、その結果によって補正書を提出する。
C 審判請求が棄却された場合の親出願の処理
親出願に対する審判で最終棄却審決を受けた場合には、その審決が確定される前に親出願に対する出願取下書を提出する。審決が確定されれば、親出願は先願の地位を維持するので、分割出願に対して先願主義が適用されるようになるからである。
3.その他の出願実務
(1)
審査官の拒絶理由に対して、補正書なしで意見書だけ提出するより、補正書と共に意見書を提出することが望ましい。
(2)
意見書及び補正書が権利範囲を意識的に除外したものと解釈されないように注意する。(均等論判断時に注意)
(3) 審査官とのインタビューを活用する。
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