韓国における化学・薬学・バイオ関連発明の特許
目 次
T.特許制度一般
1.改正特許法の出願関連事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2.バイオ発明に関する特異な特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
U.生命工学発明の明細書の作成
1.一般的な明細書の記載の原則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2.生命工学発明の明細書の作成時に考慮する事項 ・・・・・・・・・・・・6
3.請求の範囲の作成時の注意事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
V.薬学(医薬)関連発明の明細書の作成
1.薬理効果の記載の程度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2.その他明細書の記載要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
3.特許請求の範囲の記載・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
W.化学関連発明における明細書の記載事項
1.新規化合物の有用性を実施例としての記載・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.新規化合物の特性値(NMR、MS、融点など)の記載・・・・・・・・・・13
X.特許権の存続期間の延長
1.定義及び趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
2.延長の対象の発明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
3.延長登録出願の時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
4.延長期間の算定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
5. 韓国における、T.特許権の存続期間の延長登録及びU.延長登録出願事項 別表
T.特許制度一般
1.改正特許法の出願関連事項
イ.公知例外規定の拡大
従来、出願前に発明を公示した場合、公知例外規定(韓国特許法第30条第1項)の適用を受けるためには、一定の公知の要件を充たさなければならなかったが、改正法では、公知の理由に制限なく、公知の日から6カ月内に出願すれば公知理由を拒絶の根拠として採択しない(2006年3月3日施行後、最初に出願する特許出願から適用)。
ロ. 植物発明の出願の特許要件の緩和
従来、植物発明に関する出願は、一般的な特許要件と共に、無性的に反復生殖することができる変種植物を特許したが、改正法では、本規定を削除し、無性生殖の要否にかかわらず、一般的な特許要件を適用して、特許性を判断する(2006年10月1日から施行)。
ハ.国内段階移行の日を、従来の優先日から30ヶ月から31ヶ月に延長(2006年3月3日から施行)。
2.バイオ発明に関する特異な特許
イ. 特許保護の対象
(1)韓国と日本は、バイオ特許の対象が類似している。
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区分 |
対象 |
韓国 |
日本 |
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物質 |
遺伝子 |
特許の対象 |
特許の対象 |
| DNA断片 |
特許の対象、疾病診断など有用性が立証された場合のみ |
| タンパク質 |
特許の対象 |
特許の対象 |
| 微生物 |
特許の対象 |
特許の対象 |
| 動物 |
特許の対象 |
特許の対象 |
| 植物 |
特許の対象 |
特許の対象 |
| ヒト、人体の一部 |
不特許 |
不特許 |
| ヒト胚芽細胞 |
不特許 |
不特許 |
ロ.不特許事由(特許法第32条)
生命工学審査基準によると、“遺伝工学に関する発明が、次の通り公の秩序、善良な風俗、又は公衆の衛生を害するおそれがある場合は、特許法第32条の規定によって、特許を受けることができない。ただし、生命倫理及び安全に関する法律の規定により、承認を受けた研究成果物に対する発明を除く。”と規定し、その例として次の例を挙げている。
(1) 生態系を破壊するおそれがある発明
(2)環境汚染を招くおそれがある発明、ヒトに危害を与えるおそれがあり、ヒトの尊厳性を損傷させる結果を招く可能性のある発明(ヒトに危害を与える人為的な方法で得られたヒト細胞など)
(3)ヒトを複製する工程、ヒト生殖細胞系の遺伝的同一性を修正する工程及びその産物(ただし、人体から直接得られたものでなく、既に排出したもの(血液、尿、胎盤、毛髪、皮膚など)から得られたヒト細胞、又はヒトに危害をおよぼさない人為的な方法で得られたヒト細胞などは例外とし、請求項にヒト細胞を排除せず、宿主細胞及び動物細胞で記載した場合も、ヒト細胞と同様に取り扱う。)
(4)ヒトを排除しない形質転換体に関する発明
(5)生命倫理及び安全に関する法律によって禁止される行為又は研究成果物に関する発明
ハ.微生物の寄託
(1) 趣旨
生物学的物質を含む発明において、特許明細書の実施可能の要件を充足させるための制度である。
(2) 手続
(イ)
微生物を、出願前に特許庁長が定める特定寄託機関(ブタペスト条約による国際寄託機関を含む。)に寄託し、寄託機関の名称、寄託番号及び寄託日を、最初の明細書に記載しなければならず、その証明のための寄託証は出願書に添付するか、又は追って提出することができる。
(ロ) 再寄託による寄託番号の変更時に、その趣旨と新たな寄託番号を特許庁に提出しなければならない。
(ハ) 微生物を寄託した場合、viability証明書は別途に提出しなくても良い。
(3) 提出の例外
(イ) 容易に入手することができる微生物
(i) 市販されている微生物
(ii) 出願前に、保存機関に保存され、自由な分譲が確実な場合(明細書に保存番号の記載が必要)
(iii) 当業者が容易に製造することができる場合
(ロ) 微生物寄託が不要な場合
形質転換微生物発明の場合、出発物質のベクター、遺伝子、宿主細胞などが、容易に入手可能であり、形質転換方法が、当業者が容易に再現することができるように記載された場合
(4) 寄託しない場合の取り扱い
発明の技術的特徴によって、明細書の記載不備(反復再現性の欠如)又は未完成の発明として拒絶される。
ニ. 配列表提出
(1) 趣旨
核酸及びタンパク質配列を含む出願の迅速且つ正確な審査処理データの公開を円滑にするための制度である。
(2) 手続
(イ)
適用対象―4個以上の直鎖状アミノ酸配列又は10個以上の直鎖状核酸塩基配列が、出願明細書に含まれている場合であり、先行技術に相当する場合も、公開されたデータベースの識別番号で確認できるものを除いては記載しなければならない。
(ロ) 作成方法―WIPO標準ST.25を採択した、特許庁告示により特許庁で配布するKO Patent
Inプログラムを使って作成する。WIPO標準ST.25を採択したので、作成された配列目録はPCT出願時にも使用することができる。日本特許庁で配布するPatent
Inを使用して作成した場合も、若干の修正を経て韓国特許庁への提出が可能である。
(ハ) 提出方法―書面又は電子文書で可能である。書面で提出する時は、配列目録を保存した保存媒体及び書面と、保存媒体上の配列が一致するという陳述書を提出する。
(3) 提出しない場合の取り扱い
次の場合は補正命令の対象となり、補正要求書を受けてから1ケ月内に提出すれば良い。
(イ) 配列を含む出願に対して、配列目録を提出しない場合
(ロ) 配列目録を、電子ファイルで提出しない場合
(ハ) 配列目録の作成形式が不備な場合
(ニ) 配列目録を含む電子ファイルのコンピュータによる読み取りが不可能な場合
ホ.配列目録の補正
明細書の一部分であるので、明白な誤記の訂正などのみが認められ、最初出願書に新規事項を追加する補正は認められない。
補正をする時、補正された配列目録とその電子ファイルを再び提出しなければならない。
U.生命工学発明の明細書の作成
1.一般的な明細書の記載の原則
発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に実施をすることができるように、目的、構成及び効果を記載しなければならない。
2.生命工学発明の明細書の作成時に考慮する事項
イ. 請求の範囲が充分に裏付けられるように記載する。
特に、請求項を包括的に記載する場合にこれを裏付けするために、包括的な記載によって内包される全ての実施例を記載するのは、経済的・時間的などの色々な理由により不可能であるので、必須的実施例のみを記載し、付随的な実施例は、当業者に予測可能且つ明確な範囲内で予測例として記載し、請求の範囲の包括的表現に相応する、各構成要素に対する記載及び代替可能な物質、均等物などを充分に記載しなければならない。発明の種類によって、特に留意して記載する事項は次の通りである。
(1) DNA関連発明の場合
塩基配列、変異体、塩基配列特定の根拠、有用性
(2) ベクター関連発明の場合
出発ベクターの入手手段及び製造方法、挿入されたDNA及び代替可能なDNA、プロモータ、ターミネータ及びマーカ、形質転換方法及び発現の有無
(3) タンパク質関連発明の場合
タンパク質起源、採取、分離及び精製方法、確認手段、生物学的性質、アミノ酸配列、変異体又は誘導体、物理化学的特性、純度
(4) 組み換えタンパク質関連発明の場合
遺伝子、発現ベクター、宿主細胞など組み換えタンパク質の製造及び発現に使用された使用物質の入手手段、及び宿主細胞の形質転換方法、形質転換宿主を用いたタンパク質の生産、分離及び精製方法、確認方法、機能及び特性
(5) MAb関連発明の場合
免疫源の入手、製造手段、免疫方法などハイブリドーマの製造、選択及び採取方法、MAbの確認手段、エピトーフの活性、物理化学的特性
ロ.過度な実験がなくても実施が可能なように記載する。
請求項に記載された全ての発明に対して前記事項を考慮し、当業者の立場で実施可能に記載する。例えば、遺伝子、組み換えベクター、形質転換体及びタンパク質を請求した場合、単純に、遺伝子に対する実施例のみが記載された場合は、遺伝子を除いた残りの組み換えベクター、形質転換体及びタンパク質については、当業者が実施をすることができるように記載していないものとして取り扱いされる。
3.請求の範囲の作成時の注意事項
韓国生命工学関連発明の審査基準により、遺伝子、タンパク質微生物に関する発明の請求の範囲は、次の要件を充たさなければならない。
イ. 一出願の範囲
遺伝子、またこれによってコーディングされるタンパク質、遺伝子を含むベクター、前記ベクターに形質転換された微生物、タンパク質に対するモノクローナル抗体(但し、タンパク質が新規の場合)は、一出願にすることができる。
ロ.遺伝子及びDNA断片
(1) 遺伝子及びDNA断片は、原則的に塩基配列で特定して記載する。
例えば、TGTGAT…AAGGAAの塩基配列で構成される○○○遺伝子、又は配列番号1に記載されたオリゴヌクレオチドのように記載することができ、SNPの場合、配列番号3のDNA配列から構成されたポリヌクレオチド、50番目の塩基がGであり、前記50番目の塩基を含む20-100個の連続DNA配列で構成されるポリヌクレオチドで記載することができるが、どのような場合でも、“〜を含む。”は、記載不備の拒絶理由となる。
(2) 遺伝子は、塩基配列がコーディング(coding)するタンパク質のアミノ酸配列によって、特定して記載することができる。
例えば、配列番号2に記載された、アミノ酸配列をコーディングする○○○遺伝子のように記載することができる。
(3)
遺伝子変異体は、塩基配列と共に“結実、置換あるいは付加された”という表現を使用する場合、その位置と内容を明確にしなければならない。例えば、配列番号1の遺伝子で、220番目のAがGに置換された遺伝子のように記載することができる。
ハ. ベクター
(1) 一般的なベクターは、DNA塩基配列、DNAの裂開地図(cleavage
map)、分子量、塩基対数、起源、製法、機能、特性などを組み合わせて記載する。例えば、シュードモナス、フルオレッセンス(Pseudomonas
fluorescence)ATCC ○○○○から分離した、プラスミドpSF1で図1に記載された裂開地図を有するベクターのように記載することができる。
(2) 組み換えベクターは、挿入される遺伝子とベクターを特定して記載する。
但し、挿入される遺伝子が特許要件を充たし、また、その発現のために特定のベクターを必要としない場合は、挿入される遺伝子のみで特定することが可能である。例えば、コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium
glutamicum)dapA遺伝子を含む発現ベクターpDHDP5812のように記載することができる。
ニ.形質転換体
形質転換体は、微生物、植物又は動物の命名法による種名又は属名で表示された宿主と、導入される組み換えベクター(又は遺伝子)で特定して記載する。例えば、コリネバクテリウムグルタミクム(Corynebacterium
glutamicum)dapA遺伝子を含む、発現ベクターpDHDP5812に形質転換された大腸菌(E.coli)KCTC
○○○○Pのように記載することができる。
ホ. 融合細胞
融合細胞は、用いた母細胞、融合細胞の機能、特性及び融合細胞の製法で特定して記載する。
へ.タンパク質、組み換えタンパク質
(1)
タンパク質、組み換えタンパク質は、アミノ酸配列又はそのアミノ酸配列を、コーディングする構造遺伝子の塩基配列で特定して記載する。前記の遺伝子の記載方法と同一である。ただし、配列番号00の配列と、95%以上の相同性を有し、E酵素活性を有する変異体のように記載した場合、‘95%以上の相同性’の記載は、95%の相同性を有する変異体に対する具体的例示が記載されている、発明の詳細な説明によって裏付けされなければならない。
(2)
タンパク質を配列で特定して記載することができない場合は、タンパク質の機能、物理化学的性質、起源(又は由来)及び製法を、全て記載して特定しなければならない。
ただし、物理化学的性質は測定方法が併記された分子量、最適の活性条件、等電点、安定性などを記載しなければならない。
この場合、タンパク質を配列で特定して記載することができない理由が、妥当なものでなければならない。
ト.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、可変領域のアミノ酸配列、又はこれをコーディングする遺伝子配列で特定したり、モノクローナル抗体が認識する抗原と、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマで特定して記載することを原則とし、交差反応性を追加の特定手段として記載することができる。ただし、抗原が新規且つ進歩性を有する場合は、抗原を特定することのみで、モノクローナル抗体が特定されたものと見なす。
チ.アンチセンス(antisense)
アンチセンスは、塩基配列及びその機能で特定して記載し、例えば、タンパク質Pの生産を阻害する、配列番号1のアンチセンスヌクレオチドのように記載する。
V.薬学(医薬)関連発明の明細書の作成
医薬とは、ヒトを含む動物の疾病の診断、治療、軽減、処置又は予防を目的として使用する薬剤を意味し、用具類、化粧品及び飲食物類を除いたものを意味するもので、医薬に該当するか否かは、用途と関連して判断する。明細書の作成の際には特に次の事項が問題となる。
1.薬理効果の記載の程度
特定化合物が、特定病に対する治療軽減など薬効を有する医薬発明の場合、明細書に、薬効を記載しなければならないが、明細書の記載要件を充たすための薬理効果の記載程度と関連して、論難がある。
以下、現在の韓国特許庁の審査実務及び関連の韓国判例を紹介する。
イ.特許庁の審査実務
審査基準によると、“医薬に関する用途発明は、明細書に医学的用途を裏付けするための、薬理効果を出願時に記載しなければならない。薬理効果は、原則的に臨床試験により裏付けされなければならないが、発明の内容によっては、臨床試験の代わりに動物試験や試験管内の試験でも良い。”と規定している。
即ち、薬理効果を、具体的な薬理試験データで立証するように要求しており、最初の出願明細書に、単に薬理効果に関する定性的記載のみがある場合、明細書の記載不備を理由として出願を拒絶する。
ロ.判例の立場
韓国特許法院及び大法院判例でも、最初の出願明細書に、薬理効果に対する定性的な記載のみがあり、具体的な薬理試験データが全くない場合は、明細書の記載要件に違背したものと認めている。ただし、判例の立場は、薬理効果の記載程度と関連し、さらに細分化して判断しているので、これを要約すると、次の通りである。
(1) 原則的に薬理効果が認められる場合
定量的な薬理試験データ、即ち、特定の有効成分が、特定の疾病に対する治療又は予防などに効果があることを示す、定量的な記載(実験データ)が、最初の出願明細書に記載されている場合
(2) 例外的に薬理効果が認められる場合
最初の出願明細書に、上記のように薬理試験データで薬理効果が立証されていなくても、
(イ) 出願発明の化合物の薬理活性が最初の出願明細書に定性的及び定量的に記載されており
(ロ) そのような薬理活性によって、薬理効果を奏する薬理機転が公知の場合
ハ.結論
一般に、最初の出願明細書に、薬効に関する定量的データを、動物又はin
vitro実験を通して記載するのが原則であるが、薬理効果を示す薬理機転が公知の場合は、薬理活性のみを記載することも認められるものと判断され、前記2種類のうち、ある一つの要件を充たさない場合は、薬理効果に対する明細書の記載要件を充たしていないものとして、出願後に、薬理試験データを追加審査資料として提出するとしても、その薬理効果が認められない。
2.その他明細書の記載要件
イ.医薬に関する用途発明の明細書には、原則的に有効量、投与方法に対する事項が出願時に記載されなければならない。
ロ.製剤化に関する事項は、当業者が容易に実施をすることができる程度に、明細書に記載されなければならない。
ハ.毒性試験に関する事項については、特に毒性のおそれがある場合に限って、審査時に、急性毒性試験の結果を要求することができる。
3.特許請求の範囲の記載
イ. 特許の対象
前記の、生命工学発明の特許の対象でも言及した通り、ヒトの疾病を治療、軽減、診断する方法はもちろん、請求の範囲に、ヒトの疾病を治療又は診断する方法などで記載されていなくても、その発明が、実質的にヒトの疾病を治療又は診断する方法などの発明である場合は、産業上利用可能性がある発明と見なさない。したがって、ヒトを治療する方法などは、薬学組成物などの物の形式で請求するのが原則である。ただし、動物の治療のみと限定した場合、ヒトに特定物を適用させた後に、排出物、血液などを採取し、これを原料として医薬を製造する方法の発明、ヒトから既に採取、除去、排出した物、例えばヒトの血液、血漿、血清、尿、便、膿、唾液、胎盤、腫瘍、毛髪、爪などを原料とする医薬を製造する発明は、産業に利用することができる発明とする。
ロ.記載形式
目的とする用途が医薬である用途発明は、原則的に物の形式で記載しなければならない。
医薬用途の表示において、「医薬」、「治療剤」という一般的な記載は認められず、医薬用途の表示は、原則的に病気の診断、治療、軽減、処置及び予防に相当する薬効として表現しなければならない。
最近の判例(大法院2003フ1550)によると、明細書に記載される請求の範囲は、原則的に疾病の診断、治療、軽減、処置及び予防に相当する薬効として表現しなければならず、ただし、活性機転と対象疾病との相関関係が公知の場合は、活性機転による機能的表現で記載することも許容されると判示しながら、請求項に、“〜脈管形成抑制剤”のような表現を認めている。
W.化学関連発明における明細書の記載事項
これに関連し、新規化合物の出願の際には次の事項が特に問題となる。
1.新規化合物の有用性を実施例としての記載
新規化合物発明の場合、出願明細書に、その化合物の有用性、製造方法及び確認資料など三つの要件が必ず記載されなければならないが、そのうちの化合物の有用性と関連して、韓国特許庁の有機化合物分野の審査基準は次の通り規定している。
“有機化合物発明の本質は、有用な有機化学物質の創製にあるので、産業上有用な有機化合物を提供することが発明の目的であり、有機化合物それ自体が発明の構成であり、産業上有用な有機化合物を提供することが発明の効果である。
物質の[有用性]は、その化学物質の固有の性質、即ち、属性に基づいたもので、特定すれば自然に決められるためである。発明の効果は、有用な有機化合物が提供されることにあり、その効果を確認するために、製造方法と製造された化合物及び有用性に関する裏付けを必要とする。
(中略)
発明の目的は、産業上の利用分野などが従来の技術と関連して、その発明が解決しようとする問題点を含み記載されなければならず、有機化合物が有用であることを示す程度で、少なくとも、一つの用途が記載されなければならない。”
前記の審査基準から認められる通り、化合物の有用性は、その化合物がどのような産業分野で用いられることができるかという程度を示す、概略的な用途を指すもので、これは化合物の特定の属性を発見し、これを特定の用途に使うことを構成要件とする用途発明の場合のように、厳密且つ厳格な記載までは必要としない。したがって、有機化合物発明の有用性は、出願明細書に定性的に記載されれば良く、必ずしも実験例などの定量的記載が要求されるとは思われない。
2.新規化合物の特性値(NMR、MS、融点など)の記載
韓国特許庁の、有機化合物分野の審査基準には、“有機化合物発明の場合、有機化合物が確認できる程度に、その確認資料が記載されなければならない。即ち、新規化合物及び構造不明の化合物においては、原則的に元素分析値、融点、沸点、屈折率、紫外線又は赤外線スペクトル、粘度、核磁気共鳴値、結晶型又は色などを容易に確認できる、1種以上の数値及びその他の事項を記載しなければならない。”と規定している。
前記審査基準から認められる通り、韓国特許庁は、有機化合物発明の場合、化合物の確認生成資料を、明細書の必須記載要件のうちの一つに規定している。
化合物発明の明細書の記載要件として、化合物の生成確認資料の記載程度と関連して、韓国特許法院判例(特許法院2001ホ5213)は、
(イ) 化学構造が明細書に記載されており
(ロ) 出願当時の明細書に、その技術の分野の通常の知識を有する者が、容易 に再現して実施をすることができた程度に具体的な製造方法が記載されている場合、NMRデータ、融点、沸点などの確認資料は必須記載要件ではないが、前記(イ)及び(ロ)の場合でも
(ハ)化学物質の製造工程が特に複雑であったり、あるいは有力な副反応を起 こすなどの理由から、製造方法に関する記載のみでは、その化学物質が製造されたか否かが疑わしい場合は、これらの確認資料が必ず記載されなければならないと判示している。
前記の判例のように例外的に確認生成資料が必要ないと認められる場合において、韓国特許庁の審査実務は、非常に稀な場合であるので、前記の判例があるにもかかわらず、(i)大部分の化学反応で副反応が存在する点、(ii)出願後に確認生成資料を提出しても、それに基づいて明細書の記載要件を充たすものと認め難い点、(iii)出願後に、確認生成資料を明細書に追加するのは、新規事項の追加と認められる点などを考慮する時、新規の有機化合物発明の場合は、最初出願明細書に、確認生成資料を記載することが望ましいものと思われる。
X.特許権の存続期間の延長
1.定義及び趣旨
医薬品及び農薬の特許権は、その特許発明を実施するために、関係機関の許可や登録を受けなければならず、そのような許可又は登録のために、活性及び安全性試験などの手続を行わなければならない。
ところで、これには相当な時間がかかるので、特許権者はその期間だけ、特許発明を実施することができないことにより、存続期間が実質的に短くなる問題が発生する。このような問題点を解決するため、一定条件を充たす医薬品及び農薬特許権について、5年の範囲内で存続期間を延長する制度である。
2.延長の対象の発明
イ.延長の対象の要件
(1) 特許発明の実施のために、他の法令の規定によって許可又は登録を受けなければならず、
(2) その許可又は登録のために必要な活性・安全性などの試験によって長期間が所要される発明に相当する医薬、農薬発明であって、物質、製法及び用途特許がこれに該当する。
ロ. 一つの許可又は登録について、複数の特許がある場合
一つの許可又は登録について、複数の特許(物質特許、製法特許、用途特許)が係わる場合、前記の複数の特許全部について、それぞれ存続期間の延長が可能である。
ハ. 同一の有効成分について複数の許可又は登録がある場合
一つの特許に含まれている、同一の有効成分について、複数の許可又は登録がある場合、例えば化合物Aを含む製剤、注射剤及び外用剤について、それぞれ順番に許可又は登録a、b、cを受けた場合、前記許可又は登録a、b、cのうち、最初の許可又は登録aに限って存続期間の延長登録を受けることができる。
例えば、追加の剤型について許可又は登録を受ける前に、同一の化合物について、他の剤型で許可又は登録を受けている場合は、その追加の剤型に対する許可又は登録に基づいて、存続期間の延長登録を受けることができない。
3.延長登録出願の 時期
イ. 1987年7月1日から1990年8月31日までに出願して登録された発明
−特許権の存続期間の満了の日前3年以内に出願をしなければならない。
ロ. 1990年9月1日以降に出願して登録された発明
−関連機関の許可又は登録を受けた日から3ヶ月以内、特許権の存続期間の満了の日前6ヶ月以内に出願をしなければならない。
4.延長期間の算定
イ.延長期間
−最大5年の期間内で認定(最小期間は制限がない)。
ロ.延長期間の算定
従来:特許権設定登録の日、又は臨床試験計画書承認の日のうち、遅い日から医薬品許可の日までの期間
改正(2005年6月7日):臨床試験期間(特許権の設定登録の日又は最初の被験者選定の日のうち、遅い日から最終の被験者観察期間終了日) +
行政処理期間(許可又は登録関連書類の受付の日から医薬品の許可の日)。
外国における臨床試験期間は期間算定に含まず、国内で許可又は登録と関連して所要された期間のみを認める。
5.韓国における、T.特許権の存続期間の延長登録及びU.延長登録出願事項
別表の通り
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